◇ 蔵・・・ゆるゆる雑文/02_09_23 ◇

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もやしのひげ
 数年前、友人達で同じマンションの別部屋に住み長屋のような暮らしをしていた。鍵が開いていれば勝手に入ってOKのルールで、「今晩、何にしたぁ〜?」と長屋仲間が入ってきた。その時私は、台所で一人もやしのひげを取っていた。シャキシャキ歯触り良くもやし料理を仕上げるには、この一手間は欠かせない。それを見た彼女は「ヤダー!なにネクラな事やってるのぉ〜?」と言う。どうやら彼女は、私が何かイジイジといじけてそんな事をしていると思ったらしい。確かに、もやしのひげ取りは、傍から見るとそんな風に見えるかもなぁと思いながら「いやいや、こうして食べると美味しいから」と説明した。でも、子育てに忙しい彼女には面倒臭い作業としか認識してもらえなかった様だ。まぁ、栄養学的に言えば、もやしのひげ部分は繊維質も多く捨てるにはもったいない。栄養をとるか食感をとるかは、料理する人の自由だから、ひげ取りを強要するつもりはゼンゼン無い。

 ただ、なんと言うか、私はこのいじけた作業が好きなのだ。一本づつ折れないように丁寧に、ひげを取る。美味しい物を食べたい食べさせたい...という気持ちが手を動かして、丁寧な時間が流れる。それがなんとも幸福で好き。たかだか一袋50円ほどのもやしが、ひげを取る事によって愛情たっぷりな美味しい料理に生まれ変わるような、そんな気がして、私はせっせとひげを取る。

 今の時代、手間をかけて丁寧に生きる事が、ある意味贅沢になってしまった。59円でハンバーガーが食べられる時代。デパ地下で豊富なお総菜が揃う時代。タイムイズマネーな時代。時間を上手にやりくりしてこそ現代人?なんだか雑だなぁ。
天の邪鬼な私は、手間と時間をたっぷりかけて丁寧に生きたい。もやしのひげを取るようにね。
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