●The Twilight Rider
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rider mark バトゥールで初挑戦!
トレッキング

 何を思いたったか、黄昏野ライダーは、カヤッキングに続いてバトゥール山のトレッキングに挑戦することにした。実は来る7月25日は黄昏野ライダーの50歳の誕生日である。そこで、人生の節目の記念として、最初で最後であろう霊峰アグン山の登頂の計画をたてた。が、日頃運動不足の鈍った身体で、果たして霊峰アグン山登頂が可能かどうかが不安で、とりあえず低い山でトレーニングすることにしたのがこの計画の始まりである。
 今回もカヤッキングと同様“あぶない探検隊”の隊員を募ったが、さすがに旅行者は、「バリまで来てそんな疲れることはしたくない」ということで参加者がなく、結局、挑戦したのは、隊長の黄昏野ライダーと、UBUDの王宮前にコーヒー・ショップをオープンした若干28歳のK君の二人だけとなった。そして、UBUDに長期滞在を始めたS氏がトレッキングには参加しないが、付き添いとして参加することになった。
 トレッキングは早朝出発のため、前日はバトゥール湖畔のトヤ・ブンカ村にあるLAKE SIDE COTTAGESに宿をとった。この宿は、CV.JERO WIJAYAというツーリスト・サービスもしていて、“あぶない探検隊”はここのサンライズトレッキングに参加することにした。バリの人と結婚し、小さな男子のいる、ほのぼのとした家庭的雰囲気のK子さんが経営している。
 ここだけの話だが、黄昏野ライダーはトレッキングと登山は違うものと思っていた。トレッキングはハイキングの少しハードなもの、そして登山は結構命懸けのもの。そう思っていた人は多いと思う(知らないのはお前だけだ。の声)がどうもこれは同じことのようだ。
 バトゥール山は、標高1,717m。日中は暑かろうが、早朝の登山は寒いことが予想される。熱帯のバリに長期滞在を始めて7年の黄昏野ライダー、日頃はゾウリとTシャツの生活のため、登山靴はもちろん登山用品など持っていない。登山は足元が肝心と、昔、先輩からの助言があったとのことで、靴はデンパサールのマタハリ・デパートでトレッキング・シューズを購入。普段着のズボンと長袖のシャツに身を包み、友人からお土産にもらった雨カッパをヤッケ替わりに着込み、インドネシア独立50周年記念の帽子をかぶるという奇妙な出で立ちが、黄昏野ライダーの登山ファッションである。
 K子さんの畑で採れたゴボウの煮物で夕食を済ませたあと、テラスで満天の星を望む。キラキラと輝く、UBUDより数倍多く見える星に寒さを忘れ、しばしうっとり。星が10分間隔で流れていく。明日の登山の無事を星に祈る。
 PM/10:00・仮眠。
 AM/ 3:30・起床。
 AM/ 3:45・コテージのレストランで朝食。
 AM/ 4:00・宿からバトゥール山の麓まで車のトランスポートがある。まだ、身体が起きていない。
 AM/ 4:30・さあ、いよいよバトゥール山頂に向けて、30年ぶりの登山に出発だ。

 まだ夜の明けない暗い道を、懐中電灯の灯りをたよりに歩き始める。バトゥール山のシルエットがはるか頭上彼方に見える。もう後には引けない。
 麓のなだらかな道を歩きだすだけで、すぐに身体が火照りだす。足元の灯りをたよりにただ黙々と歩く。だんだんと勾配がきつくなってくる。まわりには木が一本もなく、あるのは溶岩にこびり付くように生えている雑草だけである。道は砂地だったり岩場だったり足場が悪い。ときには道とは思えないところを歩く。どこか地球と違う惑星に迷いこんだかと勘違いしてしまうほど荒涼としている。

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●一ヶ月後に挑戦するアグン山を望む筆者
 一時間ほど歩いた頃、あたりが白け始め、しだいに夜が明けてくる。目前には、立ちはだかるバトゥール山、眼下には、バトゥール湖に朝靄が幻想的にかかっている。観光客がバトゥールの展望に立ち寄るペノロカン村にあるホテルの灯りが遥か下方に見える。
 幾度か小休止をしながら進み、いよいよ最後の勾配にさしかかった。
 頂上が見える!もうひと踏張りだ!!
 一歩一歩、自分のペースを崩さずに昇る。

 AM/6:00「登頂」「ついにやったゾ!!」 よくここまで頑張った身体に感謝。
 頂上は寒く、吐く息が白く見える。しかし、気分は最高。朝陽が昇るにはまだ少し時間がある。アバン山のうしろに一際高くそびえているアグン山に向かってムスポ(=お祈り)をする。線香の煙を身体にかけると、なんだか身体がすーと軽くなる。お祈りは“無”の境地。心と身体が洗われた心地である。

 頂上にあるワルンであったかいコーヒー(Rp:2,000-)を飲みながら、太陽が昇るパフォーマンスを観賞。下界では決して観ることはできない、太陽からのプレゼントである。
 下山は景色を見ながらのなだらかなハイキング・コースである。

 体力に自信のある方、せっかくバリまで来たのなら少々疲れはするが、バトゥール・トレッキングをしてみてはどうだろう。「疲れ」の代償に、きっと素晴らしい「何か」を体験できるに違いない。


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